自己満足ワールド

その名の通り、自己満足なブログです。

スマブラSPの競技シーンを見よう

スマブラSPの競技シーン、マジで面白いので見て欲しい。

俺と一緒に10/7と10/8に行われる日本最大クラスのオフライン大会、篝火#11を見て盛り上がろう!

 

このブログで言う「スマブラの競技シーン」とは基本的に「日本のスマブラSPでの競技シーン」のこと。

SPというタイトルに限らず、スマブラというゲームで遊んだ人間は非常に多いだろう。

もちろん自分で遊ぶのが最高に面白いゲームではあるけれど、誰かが遊んでいるのを見るのも最高のゲームだと思う。

 

スマブラの競技シーンの良いところとして

・若者が強い

・1強というようなキャラが居ない

・誰が優勝するか読めない

・日本は特にレベルが高い

というのがある。

 

2023年現在、日本最強と言われているプレイヤーは競技シーンにおける最年少と言っても良い2006年生まれのプレイヤーである、あcola

日本に限らず海外でも若者が強く、現在世界最強と言われているSparg0というメキシコのプレイヤーは2005年生まれであり、16~18歳辺りの神童と呼ばれる若き強豪が世界中に存在する。

有名なザクレイMkLeoもかつて神童と呼ばれていた。

おじが強いと言われがちな格ゲーとの対比的な部分であり、若者が強いゲームは常に新しいプレイヤーが入っているということなので界隈が盛り上がっていることがわかる。

 

キャラクターのバランスがよく、本当に色々なキャラがトーナメントで活躍するのも特徴であり、後述する優勝するのが誰か読めないことにもこれが繋がっている。

バランスが良いと言っても比較的に弱いとされているキャラは居るし、そういう弱いキャラクターはぶっ壊しキャラであることが多いので大会の終盤に出てくると大いに盛り上がる。キングクルールとか。

自分の好きなゲームのキャラクターを使っているプレイヤーを注目するのもオススメ。

 

先程書いたように圧倒的な最強プレイヤーは居るが、その最強プレイヤーが負けるような強豪も多く、優勝候補と呼ばれるプレイヤーが早々に敗者側に落ちて敗者側が地獄絵図になるのもよくあること。

あcolaやSparg0もその例にもれず、TOP8に残らず敗退することも珍しくはない。

その大会で活躍する台風の目のようなプレイヤーが現れることも多く、これまで無名だったプレイヤーが突如として最強になったり、古くからのプレイヤーが過去の全盛期を思い出させるような大活躍をすることもあるのもスマブラの競技シーンの魅力。

そして何よりも大会のレベルが高く見応えがあるのが日本のスマブラ競技シーンの魅力。最上位だけ強いわけではなく、最上位勢がワンチャン負けるレベルの上位勢がゴロゴロ居るのが日本のスマブラ。そのこともあって大型大会は結果が荒れがちでアップセット、番狂わせがおこりがち。

個人的な見解ではあるが、仮に日本勢VS海外勢で10on10のチーム戦をやった場合、勝つのは日本勢だろうと言えるほど日本はレベルが高い。

 

ちなみに筆者はいわゆるザクレイキッズ。

なのでザクレイのするスマブラが大好きだし、とりあえずみんなザクレイの大会での活躍を見るべきだと思っている。

 

 

大会における基本的な知識とか用語とか

ぶっちゃけここは読み飛ばして貰って構わない。何も知らなくても見てるだけで面白いので……

大会動画を見る上で抑えるべきと思う事を適当に書いていく。

所詮筆者も大会は見る専であって参加したことはないので細かい間違いとかはご容赦いただきたい。

 

大会のルール

アイテム、チャージ切り札無しのダブルエリミネーション(ダブルイリミネーション)方式のBO3、もしくはBO5が一般的。

タイムアップした場合はストックの多い方が勝ちとなる。両方ストックが同じなら%が低い方の勝利。

BO3とはベストオブスリーのことであり、先に2回勝った方が勝ちとなる。

BO5の場合は3本先取となり、大型大会の決勝は基本的にBO5となっている。

負けた側がステージを選ぶというルールから、1本目を取ることが特に重要とされている。

BO5などでお互いに2本取っている状況はフルセットと言われている。

先に2本取られた側が3連勝して逆転する事はリバース3-0と言われる。

 

ダブルエリミネーション(ダブルイリミネーション)方式とは、勝者側と敗者側に分かれてトーナメントが進んでいく形式のこと。

 

勝者側決勝をWF(ウィナーズファイナル)、敗者側決勝をLF(ルーザーズファイナル)と呼ぶ。

WFで勝ったプレイヤーとLFで勝ったプレイヤーが最終的に戦うのが

GF(グランドファイナル)である。

GFでは、WFを勝ち上がったプレイヤーが勝った場合はそのまま優勝。

LFを勝ち上がったプレイヤーが勝った場合はGFリセットとなり、もう一度BO3、もしくはBO5を行う。

プレイヤー名の前にアルファベットや数字がある

例として、

GW|ザクレイ、DFM|ザクレイ、R2G|かめめ

など。名前の前にあるのは所属するチーム名を表している。

このようなプレイヤーは基本的にプロと考えて良い。

時期によって無所属だったり所属するチームが変わっていたりする。

数年前は無所属の強豪プレイヤーも多かったが、最近では大会で優勝するクラスのプレイヤーは大抵プロチームに所属している。

ポップオフ

プレイヤーが勝った時に取る印象的なリアクション。たぶんスマブラの競技シーンでしか使われていない単語。

椅子から飛び上がる、静かにガッツポーズを取るなど選手によって違いはあるが、普段冷静なプレイをしているプレイヤーが熱くなってポップオフをする場面は大会でしか見られない熱い瞬間。

 

実際に大会の動画を見る

百聞は一見にしかずということで、俺がスマブラの競技シーンを見る切っ掛けになった動画を貼ることとする。

40分近くある長い試合ではあるが、展開が目まぐるしく変わるので見てて退屈はしないと思う。

 

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この動画に出てくるザクレイしゅーとんはどちらもSPの発売当初から今に至るまで競技シーンの最上位を走り続けているプレイヤーであり、その強さ故に数々の大会で優勝争いをしている。

ウメブラSP5においてはWFをフルセット、GFでフルセット、GFリセットでフルセットと特に実力伯仲での試合を繰り広げている。

スマブラSPの競技シーンを語る上でかかせないプレイヤー達であり、大げさではあるが、彼らの戦いは聖戦と言われることもある。

競技シーンを楽しむ上ではプレイヤー同士のそういった因縁や関係性を知るのも面白いと思う。

 

オススメの大会動画

俺が見て面白いと思った試合を羅列していく。

これを全部見ていると膨大な時間がかかるし、軽い解説を後で書いてはいるが、そちらでは勝敗の結果も書いているのでネタバレがイヤな人は解説を読まずにそのまま動画を開いて見て欲しい。

 

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篝火#10 ザクレイVSへろー

この二人は過去の篝火で対戦したことがあり、その時もザクレイが勝利している。

文脈として、WFには現在日本最強であるあcolaが勝ち進んでいる。

これまでザクレイとあcolaの対決は実現しておらず、前回大会では惜しくもザクレイがあしもに破れてしまい、あcolaに辿り着く前に敗退してしまった。しかしこの戦いにザクレイが勝てば、ついに最強VS最強が実現する。

海外から多数の強豪プレイヤーが来日したこともあり、過去最高クラスに盛り上がった篝火#10。勝者側決勝でザクレイとあcolaが戦うかどうかが決まる極めて重要な1戦。

ザクレイは自分の有利な状況を維持する力、へろーは読みの鋭さなど、この試合は二人のそれぞれの強みが存分に出た試合であり、特に5本目の試合は一時たりとも目が離せない。ラストストック同士、2度の撃墜演出を乗り越えてへろーを打倒し、あcolaの待つWFへと進むこととなった。

最初に紹介するのはウメブラSP5のGFかこの試合かで悩んだレベルの名試合。

 

九龍#5 しゅーとんVSミーヤー

九州の大型大会、九龍の3連覇を狙う神童ミーヤーVS九州の王しゅーとんの対決。

誰がこの連覇中の神童ミーヤーを止めるのか……というほど圧倒的な強さを誇るミーヤーを相手にリセットし、フルセットの激闘を経て九州の王に返り咲くしゅーとんという構図が熱い。

九龍という大会は実況も観客も日本の大会では他に類を見ないほどの盛り上がりを見せており、今回は遠征してきた海外勢の参加などもあり歴代一盛り上がった大会と言って良いだろう。

この凄まじい盛り上がりを見せる九龍特有の空気が好き。

 

篝火#4 がくとVSしゅーとん

ルーザーズで行われた試合ということもあり、負ければどちらかが敗退するということもあって、GFのような勝てば優勝という状況ではないが魂のぶつかり合うような試合を見せている。

がくとが飛び上がるポップオフが非常に印象的。

 

JAPAN24 かめめVSツバキ

こちらもルーザーズで行われた試合。

かめめというプレイヤーは前作から活躍している古株ではあるが、ツバキというプレイヤーはこの大会で特に活躍し、いくつものフルセットを勝ち抜いた若き強豪。

メインキャラクターであるソラを破られたかめめが、サブキャラのシークで流れを変え、最後は魂の乗った元メインキャラクターであるロックマン、それも最後はこれまで何度も決めてきたコンボであるメタルブレード落としからのロックアッパーのコンボを決めて勝つという、アニメや漫画のような劇的な勝利をした名試合。

 

篝火#8 あばだんごVSしゅーとん

前作から活躍しているものの、持ちキャラがナーフされがちで最近は結果を残せずにいたあばだんごがメインキャラにメタナイトを据えて挑んだのが篝火8。

ミーヤーという神童に破れたもののルーザーズを勝ち上がり、

かめめ、ヨシドラ、プロトバナム、KENと言った誰が優勝してもおかしくないような強豪達を乗り越え、GFに挑む最後の壁として立ちふさがったしゅーとんとの試合。

あばだんごはこの後のGFでミーヤーにリベンジを果たせず惜しくも敗れるのだが、この大会の主役は間違いなくあばだんごだったと言えるだろう。

 

第29回スマバトSP あcolaVSミーヤー

両方とも同じ時期に頭角を現しはじめた神童同士の対決。

この二人は同じチームに所属していたという過去もあり仲が良く、色々な大会で優勝を争う事となる。この二人の対決は新時代のザクレイしゅーとんと言えるだろう。

 

九龍#7 かめめVSあしも

とにかく音割れが凄い。

だがそれも納得出来るほど一進一退の攻防が繰り広げられる名試合。

特に最終戦のラストストック、お互いに100%を超えて撃墜勝負になった時のヒリつきがたまらない。もはや何を言ってるか聞き取ることが不可能な実況の熱も相まって最高に熱い戦いになっている。

 

エスマTOP#14 りぜあすVSスノー

GFでもないのに合計30分という長時間の試合。

終戦を除いてどの試合もタイムアップが見えるようなジリジリとした戦いが楽しめる。

特にりぜあすというプレイヤーが他のプレイヤーには見られない、異様とも言えるプレイスタイルであり、フルセットでは彼が立ち回りをガラっと変えたことによってこれまでのジリジリとした戦いから一気にゲームスピードが変わり、あっという間に決着がついている。

 

おわりに

というわけで見て欲しいと思った名試合を貼り続けてきた。

今回紹介したものは過去の大会での結果なので、どちらが勝つかは知ろうと思えば知ることが出来るものだ。

でもやはり物事は先がわからない方が面白いと思う。

俺がよくTwitterのTLで発狂しながら「◯◯最強!!」と呟いているのはそれが一番面白いからだ。

ぜひ次の篝火#11で俺が感じたような面白さや興奮を感じてもらいたい。

いつか、同じ夢の話をしよう(中編)

前回の続きです。

 

himagine2106.hatenadiary.jp

 

というわけで、前回に引き続きアニガサキの感想やら考察を垂れ流して行こうと思う。

今更言うまでも無いかもしれないが、こじつけだろってレベルのオタク特有の決めつけが多いので注意だ。まあこの点に関しては、前回の記事も読まずにこの記事を読むオタクも居ないだろうし、問題はないだろうけれども。

 

まずはじめに、このアニメにはいくつかテーマがあると思っている。

具体的には

 

  • やりたい、なりたいと思った時に夢は始まる
  • 自分の本当の気持ちを我慢してはいけない
  • 進み始めたのなら止まってはいけない
  • 見ている夢は違っていても一緒に進むことは出来る

と言ったものだ。

上に書いた事はこの先ちょいちょい引っ張ってくるので、記憶の片隅にでも置いといて欲しい。

 

 

さて、アニガサキが非常に丁寧に作り込まれたアニメということは前回の記事でも書いたことだ。

 

このアニメはとにかく、制作側がアニメ作りに慣れてるな、と思う部分が多かった。

アニガサキにはいわゆる「特殊ED」が存在しない。どの回でもOPの「虹色Passions!」とEDの「NEO SKY, NEO MAP!」が流れる。

唯一の例外となるのは第一話のみとなる。第一話だけ、「虹色Passions!」は流れない。

その代わりに流れるのが優木せつ菜の楽曲である「CHASE!」だ。

「CHASE!」の歌詞は、「やりたいことがあったら迷わず走れ、夢を我慢するな」といった風の歌詞だ。

これはこのアニメのテーマとも合致しており、アニガサキという物語を始める為の歌としてはもって来いと言えるだろう。

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ライブシーンのここすき

 

アニガサキが丁寧に作られた話というのは何度か語ってきたことだが、それはこのシーン一つをとってもそうだ。

主人公である侑ちゃんは、なんだかライブ会場が盛り上がってて面白そうという理由だけで、ライブ会場に走っていく。そしてたどり着いたライブ会場で優木せつ菜というスクールアイドルに魅了され、そこから一気にスクールアイドルという世界にハマっていく……

高咲侑というキャラクターの好奇心の強さ、行動力の高さをよく描いていると思う。

それこそ、「CHASE!」の歌詞のように走り出したのだ。

アニガサキはこういった比喩や揶揄を至る所に散りばめている。

物語を描写する上で、こういった「遊び」というのは余裕がないと作れないものだ。

アニガサキには特殊EDがない。

特殊EDや特殊OPの強さについてはオタクはよく知っていることだろう。

 

例えば、バトルモノの最終話でOPを流さず、ラスボスとの最終決戦で流す。

第一話のEDにOPを持ってくる。

 

そういった演出だ。

 

しかしアニガサキはそういった演出を全く使わなかった。

それこそ、第12話や最終話などはめちゃくちゃに強い挿入歌が流れるのだから、それをEDの代わりにしても良いと思う。

だが、アニガサキはそうしなかった。

 

特殊OPやEDというものは、燃える演出、粋な演出という意味以外にも、そこでOPやEDを流している分、尺を長く使えるという利点がある。

アニガサキは1クールで9人のスクールアイドルを描写するというその物語の構成上、OPとED以外で必ず曲を流す、尺を取る時間が存在する。

時間で言えば1分半やそこらだろうが、OPやEDで必ず使う尺があると考えるとどうだろう。

OVAでもない地上波のアニメに許された時間は、約25分だ。

そこにOP、ED、挿入歌、次回予告なども合わせた場合、消費する時間は5分程度だろう。

残った時間は20分である。

キャラクターの多さなども考えると、少しでもアニメ本編の描写に時間を割きたいと思うのが普通だ。

だがこのアニメは、この限られた時間でキャラクターの魅力を存分に描写し、比喩や揶揄を散りばめるという余裕まで見せている。

それはアニガサキという物語が非常に優れたバランス感覚の上で計算され、作られた物語であることの裏付けと言えるだろう。

するべき描写の取捨選択が非常に上手いのだ。

例えば、音楽を題材にしたアニメには必ずと言っていいほど出るであろう、作曲や作詞は誰がどうしてるの、といった描写。

アニガサキにおいては一切そういった描写はない。

※アプリ、「スクスタ」に於いては、主人公である「あなた」が全体曲を作っていたりする。

 

スクールアイドルという以上学生でもあるのだから、授業の描写などがあってもいいかもしれないが、それもフレーバー程度である。

せいぜいあるのは中間テストで「中須かすみ」が「22点」という凄まじい点数を叩き出した描写くらいだろう。

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 ※22というとんでもない点数を見て作中一番と言っていいほど感情が出ている天王寺璃奈

 

このように、最低限の描写だけでも、物語はきちんと進むのだ。

それは言ってしまえば、現代社会ではない剣と魔法のファンタジー世界でのインフラはどうなってんの、みたいな話と同じだろう。

ファンタジー世界であれば、その世界の深みを増すためには必要な描写だと言える。しかし、ドラクエのようなRPGで下水道の話をされたってどうでもいいのだ。

 

ラブライブ!シリーズに男性キャラクターがほとんど登場しないのも、別に居なくても話が成立するからだ。

スクスタなどで語られているキャラクターの設定描写も、色々なものがカットされており、それは例えば愛さんの実家がもんじゃ焼き屋だったり、桜坂しずくが実は1年生でありながら転入生であると言った事、エマ・ヴェルデがスクールアイドルオタク枠だったりすることなどなど……

 アニガサキはその優れたバランス感覚による取捨選択によって、最低限の時間で最大の描写をし続け、比喩や揶揄を詰め込む時間を生み出したのだと言える。

 

アニガサキに散りばめられたその比喩や揶揄、伏線と言い換えても良いが、それは非常に多い。

いい意味で気持ち悪いほど多い。日常描写に限らず、ライブシーンに至るまでそれはあり、わかりやすいもので言えば標識や横断歩道の信号の色、わかりにくいもので言えばライブシーンの背景に写っている花の花言葉に至るまで様々だ。

面白い作品は何度見ても新しい発見があるものだが、アニガサキは見直す度にそういう比喩や揶揄が見つかる。

もちろんオタクの無理矢理なこじつけ、いわゆるフロム脳のような部分も否定は出来ないのだが、アニガサキほど作り込まれたアニメだったなら「これも意図した描写なんじゃないか」と思える。

そういった部分もこのアニメの魅力と言えるだろう。

 

そしてこのアニメは、最近のアニメで言えば、「鬼滅の刃」や「無職転生」「呪術廻戦」のような作画の良さは無い。

だが、作画崩壊を起こしているようなこともなく、全編通して作画は安定している。

ライブシーンには気合が入っているし、ライブシーン以外の描写でも、キャラクターの顔面が崩壊しているという事は殆どない。(殆どないというだけで、ちょっと怪しいなと思うタイミングはあるが、それでもその回の一番重要な部分はきちんと描かれている)

アニガサキは「省エネ」をするのが非常に上手いのだ。

これも取捨選択が上手いからこそ出来る芸当と言えるだろう。

そして重要なのは、省エネをしているからと言って、手を抜いているわけではないということ。

会話パートなどのキャラクターをあまり動かす必要の無いシーン、止め絵演出をするシーン……それらのシーンに比喩や揶揄を入れることによって、物語の深みや説得力を増す事に成功しているのだ。

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※これは朝香果林というキャラクターが実は勉強が出来ないポンコツタイプのキャラであることを描写している。「応援」の「援」が書けず、ひらがなで「えん」と書いてある。

 

作画コストや物語に使える時間など、使えるリソースを計算しきって丁寧丁寧に作られたアニメが、アニガサキなのだ。

 

少し話は変わるが、今の社会そのものが正常には回っていないのは皆が肌で感じていることだと思う。

この記事を書いている今でさえ、コロナによる緊急事態宣言が出ており、それはアニメ制作に於いても多大な影響を出している。

コロナの影響で制作進行に遅れが出て、放送を延期すると言った話はよく耳にしたことがあるだろう。

アニガサキに限った話ではないが、そんな中、予定通りに放送し、尚且つクオリティを落とさず最後まで放送しきったという事実がそもそも凄いのだ。

 

さて、アニガサキというアニメが非常に良く出来ている、というのは延々と綴ってきたことではあるが、次はこの物語がどのような作られ方をしているか、という話をしようと思う。

 

これは全ての回に当てはまるということではないのだが、例えば、その回で解決すべき目的、大目標があるとしよう。

3話の大目標は、「優木せつ菜も一緒にスクールアイドル同好会を復活させる」というものだ。

これは物語の大筋であり、この回はこれをどのように解決するか、というのを描写していくことになる。

その上でもう一つ問題が発生している。

一見本編と何ら関係のないものに見える問題だ。

 

それは、学園内に野良猫が住み着いているようなので、それをなんとかする……という、優木せつ菜の、生徒会長である中川菜々が解決すべき問題だった。

3話は同好会が復活する重要な回でもあるが、優木せつ菜というキャラクターを描写する個人回でもある。

住み着いている猫をどうするのか?というシーンで、優木せつ菜というキャラクターがわりとポンコツ気味であることが描写される。

生徒会長自ら、ジャージ姿で猫を追い回し、草や土で服を汚して泥臭く猫を追い詰める、という描写である。

生徒会長なのだから、自分でわざわざそんな必要をする必要がないにもかかわらずに。優木せつ菜が無駄にアグレッシブで非効率的な行動をとりがちというキャラクター紹介をここでしている。

 

しかし、だからと言って柔軟性がないというわけではない。

いわゆるお硬い生徒会長キャラクターではない、話がわかる人物ではあるのだ。

飼うのが不可能だからといって、校内に住み着いた猫を追い出したりすることはなく、猫に「生徒会お散歩役員」などという肩書を与え、野良猫を学校の1員として認め、住むのを良しとしたのである、

 

「これは屁理屈だけど、良い屁理屈だよね」とは愛さんの言葉だ。

 

3話に於ける少目標はこのように、屁理屈によって解決される。

 

そして大目標の解決方法もまた、屁理屈だった。

それは侑ちゃんが語った、「ラブライブに出る事によって問題が起きるなら、別にラブライブに出なくてもいいじゃないか」という屁理屈だ。

 

ここで、前の記事で語った「整合性ポイント」について書こうと思う。

ご都合主義的な描写に頼らなければストックされるというのが整合性ポイントだ。

 

大目標を解決する前に、少目標を解決する描写する。

少目標を解決した時と同じような方法で大目標を解決することによって、そこには繋がりが発生し、論理性が見えるようになる。

論理性があるという事は、物事を突拍子もない手段、ご都合主義に頼らずに解決出来ているということだ。つまり、整合性ポイントを溜めて、物語に説得力を出すことが出来るのだ。

 

アニガサキは度々このような手法を取り、物語全体の説得力を高めている。

言ってみれば暗喩や比喩も、「これからこんな事が起こりますよ、起こってますよ」というメッセージだ。事前に伝えることによって、こちらの心理的にも受け入れやすい状況を作りだし、それがさらに説得力や納得を生み出している。

 

説得力を生み出す方法というのは他にもあり、伏線を回収するのもそれにあたるだろう。

最終話でそれぞれのメンバーがやったライブステージ案の大元は、4話でかすみんが「どんなライブがやりたいか」という議題を出した時に、メンバーが発言していたことだ。

エマの「皆と輪になって踊りたい」、しずくの「ライブの途中でお芝居を挟みたい」、彼方の「お昼寝タイムが欲しい」

と言った内容は、そのまま最終話のスクールアイドルフェスティバルでそれぞれ話した内容の通りのことをしている。

 

このような積み重ねが、アニガサキという物語に深みを与えているのだ。

 

 

さて、アニガサキという物語の世界を一言で言うのならば、「優しい世界の優しい物語」と言えるだろう。

このアニメには基本的に悪意のある人物は存在しない。多少の例外……かすみんが悪戯をするようなことはあっても、本気で悪意のある描写(学校ではよくあるいじめ、こちらの話を聞こうともしない障害となるキャラクターなど)は存在しないのだ。

そして大きな理不尽もない。現実的な話として、「そういうこともあるよね」と納得出来る範囲のことしか起こらない。

そして、物語を進める上で発生する問題や理不尽も、上に書いたように、小さな問題を先に起こす事によってクッションとしての役割を果たしている。

最終話のスクールアイドルフェスティバルは虹ヶ咲学園だけでなく、他校や学校以外の施設を巻き込んだ大きなイベントだ。

それもなんのノウハウもない初のイベントであり、やはり問題は起こってしまう。

その時に起きた問題は、「機材トラブル」と「突然の雨」だ。

 

どちらも現実の世界でよくあることだろう。

機材トラブルの方は天王寺璃奈という有能キャラクターが無事に解決する。

しかし、突然の雨は、降っている間は為す術もなく、ただただ時間だけが過ぎていく……

 

それを解決する……というか、盛り上がる演出の為の踏み台として使うには、安易な道が存在していた。

 

アニガサキは、そのタイトルに「虹」を冠している。

雨と虹とくれば後はもう、奇跡が起きて晴れて虹が架かるという、コッテコテの演出をすれば間違いないだろう。

何ならラブライブ!2期の1話で穂乃果が「雨、やめー!」と言って、空が晴れた時のオマージュとして、そう演出するのが、ラブライブ!シリーズとして、アニメとしてわかりやすいだろう。

 

実際、アニガサキはそれをしても問題ないほどの整合性ポイントは溜めていたと思った。最後だけご都合主義だったね、でも終わりよければ全て良しじゃん、と、視聴者が思えるくらいには溜めていたと、俺は思っていたのだ。

 

だがアニガサキはそうしなかった。

 

雨は止まず、ステージを使っても良い時間はとっくに過ぎてしまった。

しかし、時間を過ぎても、観客はステージから居なくなっていなかった。

生徒会の副会長が学校側に掛け合って、あと1ステージだけ出来るように動いていたからだ。

 

そしてスクールアイドル同好会のメンバーは、会場に向かって走り出したのだった。


……これは安易な奇跡ではなく、人間の努力や善意による結果だ。

天王寺璃奈が、そのスキルを持って機材トラブルを解決したように、人間が行動したからこその結果だ。

それを裏付けるように、ダイバーシティに聳え立つユニコーンが、サイコフレームを共振させる。このアニメがサンライズが関わっているという理由でのみ成立する、卑怯極まりない演出だ。

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この機体……ユニコーンガンダムは「可能性の獣」と呼ばれる事もある機体だ。

ユニコーンの作中で語られたセリフに、こんなものがある。

人間だけが神を持つ。今を超える力、可能性という内なる神を

OVAユニコーンガンダムの最終話のサブタイトルが「虹の彼方に」である事も考えても、この演出は卑怯すぎるだろう。

理不尽なことがあっても、人は乗り越えていけるのだと示してきた。

 

そしてアニガサキは……

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバーは、安易な奇跡により虹を見るのではなく……

真っ黒な夜空に、自分達の虹の輝きを写して見せたのだった。

 

 というわけで中編終わりです。

本当は前編後編にするつもりだったけど、何かここで一旦区切りつけたほうがいいかな~って気分になってきたのでここで区切る事にします。

 

さて、この後に及んでまだアニガサキを見ていないのにここまで記事を読んだ人間が居るとは思えないが、もし居るのなら即刻見て、俺とアニガサキ考察バトルをしないか?

 

私と一緒に、夢を見ませんか?(カギ爪の男)

次の後編で一応終わる予定です。

アニガサキはガン×ソードだった、みたいなトンチキな理論を振りかざしつつ、どういう物語だったのかを書きたいと思っているので、皆読んでね!

 

 

いつか、同じ夢の話をしよう(前編)

タイトルは、神アニメ『ガン×ソード』の中でも特に好きなセリフです。

 

今回の記事で書くことにガン×ソードは関係ありません。

今回書くのは……

 

TVアニメ

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

 

 

 


アイドルアニメについての記事です。

自分語りもめちゃくちゃ多いのでめんどくせえオタクだな、と思ったら読み飛ばしてください。

あとめちゃくちゃにネタバレしまくってるので

ネタバレされるのが嫌いな人

まっさらな気持ちで作品に触れたい人

そういった方は読まない方が良いと思います。

 

 

さて、俺の事を多少なりとも知っている人間しかこのブログを読んでいないと仮定して……思ったことがあると思う。

 

「なぜお前が萌えアニメ(アイドルアニメ)に夢中になっているのか」

と。

 

俺はまあ客観的に見て硬派なオタクであり、いわゆる萌えアニメをあんまり見ないオタクだ。

その代わりに熱いアニメや泥臭いアニメを好んでいるニトロプラスが大好きなオタクだ。

おおよそ、アイドルコンテンツに縁のないタイプというか……そもそも興味自体があんまりわかないタイプなのだ。

だからといって萌えのコンテンツに一切理解が無いわけでは全然無く

実際はきららアニメとか結構好きだ。きらら漫画も結構読む。

それに最近は食わず嫌いをせず、色々なコンテンツに触れてきてもいる。

 

では何故そんな硬派なめんどくさいオタクである俺がアイドルアニメであるラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(以下、アニガサキと呼称する)に熱を入れているのかを適当に書き綴っていこうと思う。

 

本題に入る前に一応注意書きというか

そもそもこの記事に書いてある事は俺の主観なので実際の展開と微妙に差異があったり「この解釈は違うんじゃね?」ってなっても俺は知りません。

そもそものブログ名が「自己満足ワールド」な辺り、予防線は貼っている。

脈絡もない話もするし論文のように理路整然と纏めているわけでもない。

めんどくさいオタクがめんどくさいことを書いていると認識してくれればいい。

 

というわけでアニガサキについてではあるが……感じた事を適当に箇条書きにしていこう。

 

・話が単純に面白い

・話が非常に丁寧に作られている

・キャラクターに魅力がある

・キャラクターが生きている

・作画が良い

・音楽が良い

・物語に説得力がある(すんなり物語の展開を受け入れられる)

 

こんな感じである。

ぶっちゃけ特異な要素はない。要素だけを見るならば「良く出来た面白いアニメ」の一言で終わるだろう。

同じ2020年の「良く出来た面白いアニメ」で言うのならば「デカダンス」のように目を引くような新しい世界観があるわけでもなく、主人公が何かをぶっ壊す!みたいな話でもない。

ラブライブ!シリーズを知っている前提で話すならば……

『スクールアイドルを題材にした普通の青春スクールアイドルアニメ』であると言える。

スクールアイドルをしている女の子達の日常を描く王道のアニメと言えるだろう。

 

 

しかしアニガサキは「ラブライブ!」というシリーズの中で言えばむしろ異端と言える物語だった。

過去にアニメを放送していた「ラブライブ!」「ラブライブ!サンシャイン!!」は、タイトルに冠されているように「ラブライブ!」と呼ばれるスクールアイドルの大会に出場すること(優勝すること)が大目標として設定されている。

  

アニガサキを見るにあたってまず俺が最初に思った事……「こうなるだろう」と予想した展開はこうだ。

 

主人公となるキャラクターが物語を動かし、同好会を復活させ、何だかんだ最終的にはグループ全員が想いを一つにして「ラブライブ!」に参加し、優勝するなり優勝せず敗退するなどしてリベンジに燃える……そんな物語だ。

 

俺が予想した物語はラブライブ!シリーズを見てきた視聴者からすれば「またこの展開か」とはなるかもしれないが、それだけに「そういう話が見たい」層に向けた話としては無難ではあるし、作り方によってはより盛り上がる展開も作れるかもしれない。

だからそうするのだろうな、と思った。

しかしアニガサキは違っていた。

 

 

まず、主人公がアイドルではない。

ラブライブ!に於ける穂乃果のように自らアイドルをして、グループを引っ張っていくリーダー的な人物ではない。

語弊があるかもしれないが、アニガサキという作品に於いて主人公を定義するならば「高崎侑」が主人公と言えるだろう。 

これはアニメの大元と言えるアプリゲーム、スクスタにおける自身の分身……FGOに於ける藤丸立香、通称「あなた」に位置するキャラクターだからだ。

侑は言わばスクールアイドルのマネージャーだ。

アニガサキという物語は侑が「優木せつ菜」というスクールアイドルのライブを見て、スクールアイドルに興味を持った所から始まったのだった。

 

 

アニガサキが他のラブライブ!シリーズと違う点として、虹ヶ咲学園は閉校の危機に扮しているわけではないという点がある。

 

ラブライブ!とサンシャイン!!は、主要なキャラクターがスクールアイドルをするにあたり「自分達の学校を盛り上げる為」という理由があった。

 

スクールアイドルの全国大会である「ラブライブ!」で活躍すれば統廃合の危機を脱せられるかもしれないから、優勝目指して頑張る……

これも青春モノや部活モノではありがちな王道的な話の作りと言えるだろう。

ありがちではあるが、そういった作品の全てが廃校の危機だから頑張る!という話ではない。

普通の部活モノでも優勝を目指したりするだろう。

優勝するという目標は、物語の行く先を定める上で非常にわかりやすい物であるからだ。

 

なので先ほども書いた事ではあるが、このアニメはラブライブを目指して頑張る話なんだろうなと思っていた。

1話、2話と話が進む度にスクールアイドル同好会のメンバーをキャラ紹介ついでに増やしていくような感じで進むのだろう、と。

 

しかしその考えは3話で打ち砕かれることになる。

 

 

さて、アニガサキ3話について語る前に、あるスクールアイドルの話をしよう。

 

虹ヶ咲学園のスクールアイドル同好会は、一度解散している。

それはグループとして活動していたメンバー同士のスクールアイドルに対する認識の違い、意識の違いからだ。

いわゆる「音楽性の違いによる解散」と言えるだろう。

 

解散の発端となったのは……優木せつ菜というスクールアイドルだった。

彼女は真面目なしっかり者であり……尚且つ非常に情熱的な性格をしている。

そのような彼女の人間性が悪い方向に作用してしまい、同好会のメンバーと衝突してしまう。

語弊を招くかもしれないが、わかりやすくゲームで例えるならせつ菜はガチ勢である。

そして同好会を協力ゲーと考えるなら、せつ奈は自分のプレイスタイルを他人にも強要してしまっていたのだ。

同じくスクールアイドル同好会のメンバーである「中須かすみ」は、せつ菜の目指すスクールアイドルと自分のやりたいスクールアイドルは違うと叫んだ。

そしてせつ菜は自分自身の考えを他人に押し付けていたと自覚する。

 

優木せつ菜というキャラクターには野望がある。

これはアプリ、「スクスタ」のキャラクター紹介でも書かれている事だ。

『私ね、実は大きな野望があるんですっ!
ちょっと恥ずかしいけど勇気を出して言いますね。
それは『大好き』を世界中に溢れさせちゃうスクールアイドルになることなんですっ!』

 

彼女は自分の好きな事を押し付けることをせず、誰の好きな事も否定しない世界を作りたい……そんな信条でスクールアイドルとして活動していたのである。

しかし、彼女はその情熱が裏目に出てしまった。

誰かの……中須かすみの持つスクールアイドル像を、彼女の「大好き」を否定してしまっていたのだ。

その事に気付いた彼女はスクールアイドルを辞める事を決意する。

せめてものケジメとしてグループお披露目ライブで一人ステージに立ち、最後のライブをして去っていった。

侑が1話で見たライブはその時のライブである。

 

アニガサキ3話本編について語ろう。

主人公である侑は自分がスクールアイドルに興味を持つ切っ掛けとなった人物である優木せつ菜の正体が

生徒会長である「中川菜々」であると知ることとなった。

そして一度は解散した同好会ではあったが、離れていたメンバーが戻ってきたということもあり

人数だけで言えば無事に同好会を再建することが可能な人数になっていた。

だが、同好会を復活させるには優木せつ奈という存在が不可欠であると語るメンバー。

優木せつ奈を説得することに名乗りを上げたのは侑だった。

 

侑はせつ菜を校内放送で呼び出し、スクールアイドル同好会に戻って欲しい、と告げる。

 

そんな侑に対してせつ菜は

「自分がスクールアイドル同好会に戻ったらまた同じようにグループが崩壊して

ラブライブに出れなくなってしまう」

と吐露する。

 

しかし侑はそんなせつ菜に向かって「だったらラブライブなんかに出なくて良い!」と叫んだのだ。

 

彼女は続ける。

「私は、せつ菜ちゃんが幸せになれないのが嫌なだけ」

 

ラブライブみたいな最高のステージじゃなくてもいいんだよ。せつ菜ちゃんの歌が聴ければ、充分なんだ。…… スクールアイドルがいて、ファンがいる。それでいいんじゃない?」

 

ラブライブを目指す事によって大好きを否定することになるくらいなら

ラブライブを目指さずにスクールアイドルをすればいいのではないか、と。

 

せつ菜は問いかける。

「どうして、こんな私に……」

大好きを広めたいと言いながら他人の大好きを踏みにじってしまった自分に、なぜそんな優しい言葉をくれるのかと。

 

侑の返答はこうだった。

「言ったでしょ?「大好き」だって。こんなに好きにさせたのはせつ菜ちゃんだよ?」

 

それは侑にせつ菜の「大好き」が伝わったことがわかる瞬間だった。

そしてある意味では自分勝手な言葉だ。

侑にとってせつ菜は「大好き」なスクールアイドルだ。

侑はそんな彼女の辛い姿は見たくないし

せつ菜のスクールアイドルをする姿が見たいい。

だからスクールアイドルを続けて欲しい。

そんな自分勝手な願いだ。

 

せつ菜は侑にこう告げる。

「あなたのような人は、初めてです」

このセリフは視聴者の代弁でもあるだろう。

少なくとも俺はそう思った。

ラブライブ!シリーズなのに「ラブライブなんかに出なくていい」と言ったキャラは初めてだ。

 

せつ菜は侑に続けて問い掛ける。

本当に良いのか、と。わがままを……大好きを貫いても良いのか、と。

侑は満面の笑みで「もちろん!」と答えた。

 

その返答を聞いたせつ菜は、

「わかっているんですか?貴方は今、自分が思っている以上に、凄いことを言ったんですからね?……どうなっても、知りませんよ!」

 

眼鏡を外し、髪を解いて……生徒会長から、スクールアイドルへと変身する。

 

「これは、始まりの歌です!」

www.youtube.com

 

その場でゲリラライブを決行し、自分はスクールアイドルに所属する優木せつ菜だ!と叫び、彼女はスクールアイドル同好会に復帰し、そしてそゲリラライブを見て「自分達もスクールアイドルをやってみたい」と言う、同好会のメンバーになるであろうキャラクターを匂わせて、3話は終了する……

 

 

 

こうして3話を見終わって結構な衝撃を受けた記憶がある。

ラブライブ!ラブライブを目指さない発言、ラブライブ目指さないならどういう展開にすんの?どうなんの??と、なった。

アニガサキを最後まで追ってみよう、と思い始めたのはこの回を見てからだったと思う。

 

そもそも俺がアニガサキを見始めた理由は、 知り合いのオタクが見るらしいからだった。

このアニメを見ればオタクと話す時の話題になるだろうし

クソアニメだったならバカにして笑えるだろう……というしょうもない理由だ。それが全体の理由の7割くらい。

残りの3割はあるキャラクターが気になったからだった。そのキャラとは

 

天王寺璃奈」

天王寺 璃奈 | ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS(スクスタ)璃奈ちゃんボード」をつくろう!要件定義編 - Qiita

 

 

という、顔面を隠した女だ。

 スクールアイドル同好会のメンツの中でも一際目立つ容姿をしたこのキャラクターは、ライブをする時に素顔を見せず、「璃奈ちゃんボード(上記画像のモニターやスケッチブック)」を装着してステージに上がる、アイドルアニメというジャンルの中でも一際特異なキャラクターと言えるだろう。

 

 

俺が彼女を見た時に抱いた感想は、いかにも“オタク受け”しそうなキャラだな、というその程度のものだった。

ロリ体型、アホ毛、萌え袖、猫耳ヘッドホンに璃奈ちゃんボード……このキャラクターは一発で「二次元」とわかる。

 

キャラクター設定を並べてみても

・情報処理科

・機械にも強い

・ゲームが得意なオタク

など、オタクが共感を持ちやすい設定となっている。

 

オタクはオタク女のキャラクターが好きなのだ(偏見)

 

この天王寺璃奈というキャラクターは、発表されてから2年間素顔を晒すことの無かったキャラクターであり、素顔がわかった時はTwitterのトレンドにもなったほどだ。

 

アニガサキを見始めた時の俺は、上に書いてある程度の事を事前に軽く調べていた。

なので、アニガサキに登場する時はスケッチブックで顔を隠して登場するのだろうと思っていた。アニメ公式サイトのメンバー紹介でも隠しているし。

 

しかし、それは違った。

彼女はアニメに初登場した段階で素顔を晒していた。

 

これはかなり意外に思った。

天王寺璃奈のアイデンティティは璃奈ちゃんボードにあると思っていたからだ。

しかし彼女はボードをつけず、素顔のまま、無表情のままにアニメに登場した。

 

俺は無口なキャラ、無感情なキャラが好きだ。

俺はちょろいオタクなので、素顔でアニメに登場した天王寺璃奈というキャラクターを一発で好きになった。

 

俺は作品を追う上で好きなキャラクターを見つける、定めるということは重要だと思っている。

さほど興味の無い話の展開だとしても、好きなキャラクターがいつ画面に映るか……そしてどう動くか……と楽しみにして作品に臨めるからだ。

 

 天王寺璃奈というキャラクターを好きになってから、「この娘の個人回までは見よう」と決めた。

 

そうして天王寺璃奈の姿を追いながらアニメを見続けている中、3話のあの展開にぶち当たり、この作品と本気で向き合うべきかもしれないと思い始める。

 

天王寺璃奈の個人回があったのは6話だった。

1~5話までを見続ける中で、俺はアニガサキが丁寧に丁寧に作られた作品であると確信した。

話の展開に無理があると感じない、論理性のあるアニメであると思ったのだ。

ご都合主義的な描写は可能な限り抑えられており、「この設定のこのキャラクターはこの状況だったらこうするだろう」と素直に受け止められるストーリーだった。

 

わかりにくい例えになるが、なろう系アニメをニコニコで見た際の

「は?」「そうはならんやろ」

というようなコメントが流れてこない、そんなアニメがアニガサキだ。

歌い出すとMVが流れ出して固有結界だのなんだのと言われるのは無視するとして。

 

俺のフォロワーのオタクはこの作品をこのように語っている。

 

「アニガサキはご都合主義を本当に最低限に抑えてる。個人の思考としてご都合主義(デウス・エクス・マキナ)などは頼らなければ整合性ポイントがストックされていって、大事な場面の勢いを優先することが出来る」

 

この「整合性ポイント」という概念は俺もわかりやすいと思ったし、その通りだと思った。

 

アニガサキのキャラクターはそれぞれにスクールアイドルをする理由や夢、アイドルをする上での目標がある。

個人回ではアイドルをすると決めた理由、そしてステージに上がって目標を達成する様子が描かれる。

 

このそれぞれの理由付けと目標を達成するという描写が非常に丁寧であり、問題提起とその具体的な解決策はどれも納得出来るものだった。

問題を提示し、解決に向かうまでの流れで整合性ポイントを溜め、その解答にご都合主義的な描写が必要ならば描写する。

その時のご都合主義感は、整合性ポイントを消費することによって違和感無く「面白い物語」として受け入れることが出来る、ということだ。

 

6話もその例に漏れず丁寧に描かれた回だった。

 

 

天王寺璃奈は友達が少ないキャラクターだ。

感情を表に出すのが苦手であり、楽しい時も真顔のままで、周囲の人間に誤解されがちな……そんなキャラクターだ。

いわゆるコミュ障。

「わたモテ」のもこっちや「古見さんはコミュ症」の古見さんのようなキャラクターだ。

この2人のキャラクターはモテたい、友達を作りたいという思いを持っており、それぞれの作品もコミュ障が自分が関わる人を増やすために頑張る……といった内容である。

 

天王寺璃奈も同じような願いを抱えている。

彼女はシャイで臆病な気質はあるが、人付き合い自体は好きな方で、誰かと話をするのが好きなキャラクターだ。

 

意外にも行動力がある方なので、友達を作ろうとしては失敗する……そういう経験を繰り返しながらも、それでも諦めずにまた友達を作ろうと頑張れる。

それが天王寺璃奈という女の子だ。

 

そんな彼女が虹ヶ咲学園で初めて出来た友達が「宮下愛」である。

通称「愛さん」と呼ばれる彼女ともまた色々な関係性があるのだが、今回は省くこととする。

天王寺璃奈は彼女と一緒に優木せつ菜のゲリラライブを見て、スクールアイドルをしようと決めたのだった。

彼女もまた、優木せつ奈というキャラクターに影響された人間の一人だ。

 

 

天王寺璃奈というキャラクターは機械に強い。

スクールアイドル同好会のライブ映像を編集し、動画サイトに投稿しているのは彼女である。

部員のPVを作っているのも彼女のようだ。

彼女はある日の放課後、スクールアイドル同好会のメンバーとアミューズメント施設(ジョイポリス、ライブも出来るらしい)で遊んでいる所、クラスメイトと遭遇する。

クラスメイトである彼女達はスクールアイドル同好会の事を知っており、ライブ動画やPVを見て、歩夢のファンになった人物も居た。

 

彼女達はスクールアイドル同好会の次のライブが待ち遠しいとの事で、次のライブはいつなのか~という話題になった。

 

璃奈は思う。

(友達に……なりたい)

璃奈はある決心をして、その場でクラスメイトに告げる。

天王寺璃奈というキャラクターは、行動力があるのだ。

 

「やる。……私、ここでライブやる!」

 

彼女は自分の最初のライブを、クラスメイトを誘おうとして一度諦めてしまったジョイポリスのステージですると決めたのだった。

 

急にライブをすると決めたという事もあり、ライブまでの準備期間はそれほど長い物ではなかった。

彼女は限られた時間の中、スクールアイドル同好会の皆に協力してもらい、ライブを成功させることを誓う。

 

ライブ映像は自分で作れるからパフォーマンス面を鍛えて欲しい……との事で、彼女は仲間達に師事する事になる。

璃奈は努力家でもあり、彼女が真面目に頑張って来た事が描写される。4話では全く出来なかった柔軟が多少は出来るようになっていたり、MCは苦手だから今回のライブでは省くか、との提案があった時も

 

「ううん、やる。今回は、『出来ないからやらない』は、無しだから」

 

と言って、自分の全力を尽くすことを表明する。

 

場面は変わり、璃奈は同好会のメンバーを自分の家に招待する。

ライブ用に作った映像を見て貰い、それの感想や意見を貰うためだ。

 

この時も彼女が機械に強いという描写がされる。

彼女はスマートフォンで家の事は大体出来るようにしてあると語る。

機械に強くなったのも小さい頃から友達が居なかった為、必然的に一人で遊んでいたからだ。

そのうちに工作などが得意になったのだと。

 

そして彼女は語る。「高校生になって、こんなに毎日がワクワクするなんて思わなかった。こんなに変われるなんて思わなかった」と。

そう語る彼女の顔は無表情ではあったが、彼女の中では確かに変わったという実感があるのだ。

「みんなに、すごく感謝してる。私……頑張るよ」

決意を新たにする璃奈。

(そうだ……もう私は、この前までの私とは違う!)

 

ライブを告知するPVもアップされ、いよいよライブの日が近づいてきていた。

パフォーマンスも仕上がってきており、準備は順調。

そんなある日、練習中にクラスメイト達に話しかけられる。

 

彼女達もライブを楽しみにしているようだった。

 

(今の私なら……)

彼女は意を決して、クラスメイト達に話しかけようと歩み寄り……

「もし、よかったら……」

「もし、よかったら……!」

ふと、ガラスに映る自分の姿を見てしまった。

 

そこに写っていたのは、今までと全く変わらない無表情の自分の姿だった。

ライブに向かって努力をしても、スクールアイドルとして頑張っても、全く変える事の出来ない自分の表情を目の当たりにしたのだ。

意気消沈した璃奈は、クラスメイト達の前から立ち去り、自分の部屋に閉じこもる。

 

(私は……変われない)

 

ライブの前日になっても同好会の練習に姿を見せない璃奈を心配し、彼女の家に全員で押しかけるスクールアイドル同好会の面々。

 

璃奈は同好会の面々を家に上げ、彼女達と対面する。

しかし璃奈はダンボールを被っており、誰とも顔を合わせたくないようだった。

 

そんな璃奈に愛さんは「どうしたの」と声をかける。

璃奈は己の心情を吐露する。

「自分が……恥ずかしくて」

 

「私は、何も変わってなかった」

スクールアイドルとして頑張ってきたのに、自分の一番変えたい部分は何も変わっていなかった。

 

昔から感情を誤解され、皆と仲良くしたいと思ってるのに、誰とも仲良くなれなかった。

今もクラスに友達は居ない。

それも全部、自分のせいなのだ。

 

「もちろん、それじゃダメだと思って、高校で変わろうとしたけど……最初はやっぱりダメで……でも、そんな時に、愛さんと会えた。スクールアイドルの凄さを知ることが出来た」

 

「もう一度、変わる努力をしてみようって思えた」

 

歌でたくさんの人と繋がる事の出来るスクールアイドル……それが出来れば、今とは違う自分に変われるかもしれない、と。

 

そして努力してきた。

けれど、どうしても気になってしまう。

自分の表情が変わらないことが。

何度も何度もそれで失敗を重ねてきたから。

どうしても気になってしまう。

表情で誤解されてしまうと思うと、胸が苦しくなってしまう。

こんな風に思ったままじゃ、ライブなど出来ないと、思ってしまう。

 

「私は、みんなと繋がる事なんて、出来ないよ……ごめんなさい」

そう言って、同好会のメンバーに謝罪する。

 

「ありがとう。璃奈ちゃんの気持ち、教えてくれて」

 

そんな璃奈に告げられたのは、侑の感謝の言葉だった。

愛さんもそれに同意し、侑はさらに言葉を続ける。

「私、璃奈ちゃんのライブ、見たいな。……今はまだ、出来ないことがあってもいいんじゃない?」

 

同好会のメンバーも侑に続いて言葉をかけていく。

 

璃奈には出来ることがたくさんあるのだから。

だから今は出来ないことがあってもいいんじゃないか、と。

 

そしてかすみはこう語りかける。

「ダメなところも武器に変えるのが、一人前のアイドルだよ?」

 

愛さんもそれに続く。

「出来ない事は出来る事でカバーすればいいってね。一緒にそれを考えてみようよ」

 

そして、ダンボール越しではあるが、自分と真剣に向き合ってくれている皆に感謝の言葉を告げ……そして、ある考えを思いつく。

 

ダンボールを被ったまま立ち上がり、閉じられていた部屋のカーテンを開け放ち、「これだ!」と叫ぶのだった。

 

そして迎えるライブ当日。

同好会のメンバー達に「がんばれ」と応援されながら、彼女はステージ向かった。

 

 

そして璃奈のMCが始まった。

PVでも使っていた猫のキャラクターに自分の声を乗せてMCをする璃奈。

裏で流れているBGMは「アナログハート」という、彼女のソロ曲のイントロだ。

アナログハートの歌詞の内容としては、「例え離れていても、心は繋がっている」というものだ。

 

虹ヶ咲学園のスクールアイドル同好会は、グループ活動をしているわけではない。

部員のそれぞれはソロアイドルである。

しかし、一人でステージに立つのではない。

それぞれが助け合い、背中を押してもらってステージに立っている。

ライブをする時は一人ではなく、心は繋がっている。

 

 

MCが終わり、姿を表す璃奈。

彼女の顔にはある装置が取り付けられていた。

自分の表現したい感情を表す為のモニター。

それは、「璃奈ちゃんボード」だった。

仮面のようなそれは、彼女の本来の表情である「無表情」を隠している。

しかしそれは、表情を隠し、自分を偽って、心を守るための防具ではない。

 

それは彼女の武器だ。

自分の感情を表現し、感情を伝えて、周りと繋がる。

それが彼女の出した解答だった。

自分の表情を変えることが出来ないのなら、出来ることでカバーする。

自分の得意な機械を使って、無表情というダメな所を、唯一無二の仮面アイドルという武器にする。

 

そして彼女のライブは始まる。

www.youtube.com

 

パフォーマンスを終えた璃奈は、心の中で叫んだ。

(……皆と、繋がった!) 

 

「璃奈ちゃんボード「『にっこりん♪』」

天王寺璃奈というキャラクターを象徴するセリフを言い放ち、ライブは終了する。

 

そして後日。

学校に登校してきた璃奈に向かって、クラスメイト達は「おはよう」「ライブ最高だった!」と告げる。

クラスメイト達は呆気に取られる璃奈に向かって、いっぱい感想も言いたいし、お昼ご飯も一緒に食べよう!と声をかけるのだった。

 

璃奈はスケッチブックを取り出し、とびっきりの笑顔を描いて、彼女達に告げる。

「いいよ!一緒に食べたい!」

 

 

最高の回だった。

神回と言っていいだろう。

天王寺璃奈というキャラクターが何故璃奈ちゃんボードを使うに至ったのかを描く上で、これ以上はないと思えるような回だった。

 

俺はスクスタのストーリーを全て把握しているわけではない。

しかし、天王寺璃奈というキャラクターを描く上で、アプリとは全く違った、1から天王寺璃奈というキャラクターを描く話だったと確信している。

 

アニガサキは整合性ポイントとご都合主義の使い方が上手いという話は既にした通りである。

 

璃奈が努力してきた描写を丁寧に描き、整合性ポイントを溜めていく。

そして物語を進行する上で起こってしまった問題を解決する為のご都合主義が璃奈ちゃんボードだ。

俺はこの展開に心から納得出来た。璃奈ちゃんボードという二次元極まりないアイテムを出す説得力が、論理があった。

 

単にオタク受けを狙うキャラクターデザインとしての璃奈ちゃんボードではなく、天王寺璃奈というキャラクターを活かすための璃奈ちゃんボード。

 

そして俺は、天王寺璃奈というキャラクターが大好きになったのだ。

 

 

 

というわけで、前編終了である。

本当は年内に全て書きあげてから投稿したかったアニガサキの感想ブログではあるが、流石にこの段階で文字数が1万文字を超えている事に気付いてそれは諦めることにした。

後編では、このアニガサキという物語がどういう物語で、どのような結論を出したか、について書いていきたいと思う。

 

アニガサキは夢を描く物語でもある。

アニガサキを見てないのにこの記事を最後まで読んだ人へ。

ここまで読んだなら、このアニメが本当に面白いアニメだとわかるはずだ。

アニメのサブスクを使うなりなんなりして、アニガサキを今すぐ見よう。

そして俺とアニガサキの面倒なオタク話をしよう。

 

 

いつか、同じ夢の話をしよう。

 

 

暇だからガンダムの話書いた3

暇だったので書きました

前の続きです

前のやつ

 

himagine2106.hatenadiary.jp

 

 

半年以上経ってるけど更新しました。

前書いた話よりは更新が早い。

みんなが「読んだよ♡」って言ってくれればたぶん週1とかで書きます。

俺の承認欲求を満たしてほしい。

――――――――――――――――――――――

 


マッチングするまでの間、俺と彼女の間に会話は存在しなかった。
俺はあまり人付き合いが得意ではない。もっとも、友達が一人も居ない、というほどコミュニケーション能力に障害を持っているわけでもないが。


彼女……プレイヤー名で呼ぶとして、ハンマー氏もおしゃべりなタイプでは無さそうだ。ちらりと視線を向ければ、スマートフォンをぼーっと見ている様子。
少しの間流れる気まずい空気……それを打ち破るように、筐体の画面に変化が訪れる。

CAUTIONと文字が表示され、画面が暗転する――

「マッチングしたみたいですね」
俺はハンマー氏に声をかける。
「あ、はい。 頑張りましょうっ」
ぐっ、と両手の拳を握りしめるハンマー氏。なんだかあざといような気もするが……単に俺が女性に慣れてないせいでそう思うだけだろう。きっと。

「ええ、頑張りましょうか」
「どんな相手でしょうか……」

そして、画面に相手のペアが表示される。
階級は同じくらい……だが、8連勝。ノーネーム。これは……
(サブカード、か)

いわゆる雑魚狩り、と呼ばれる行為だろう。
階級が同じくらいの者同士がマッチングするというシステム……対戦ゲームではよくあるシステムだ。

そのシステムを悪用し、初心者を狩りに来ているプレイヤーだと容易に察せられる。
機体の構成はを確認すると……

「3000コスト、フェニックスガンダムと……2500コスト、デスパーダ」
高機動変形持ち万能機。そして、少し変わったオールレンジ武装を持っている前衛寄り低コストの編成だ。


Gジェネペアって感じですね」
さらりとハンマー氏が呟く。ガンダム系のゲームが好きな女性なのだろうか。機体選択のセンスといい、そういう面があるのだろう。

「あの編成を見るに、疑似タイマンからの減った方が先落ち……だと思います」
俺は思ったことをそのままハンマー氏に伝える。
「ですね、もしかしたらデスパーダ爆弾の可能性もありますが……」
ハンマー氏は頷きつつ、そう答えた。
爆弾の可能性まで考えている辺り、VSシリーズのセオリーなどは一通り知っていると考えていいかもしれない。


本当に右も左も知らないシャッフル勢を介護するよりは楽に勝てそうだ……相手のレベルにもよるが。


「どちらにせよ、疑似タイは避けた方が良さそうですね……っと、試合が始まりますね」

俺は画面に視線をやり、ゲームに集中する……

そしてハンマー氏は何気なく呟いた。

「……疑似タイなら望む所です」
「えっ?」
今、彼女は何を言って――
「始まりますよ」
「あ、ああ、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」

先程の言葉の意味を確かめる間も無く、対戦が始まった。
通信ボタンを叩き、お互いに【よろしくお願いします】と通信を送り合う。
長年続いたガンダムVSシリーズでの儀式のようなものだ。

――今回の俺は低コストだ。
それも初めて組む相方の後ろでサポートする役割。
相方がどんな立ち回りをするのであれ、とりあえずは様子見をすべきだろう。
特に相手は前ブーストを多く踏んでくる相手と見える。

これは突っ込んでくる相手をいかに迎撃するかの試合になりそうだ……そう思っていた所だったが……

ハンマー氏の駆るザンスパインがフェニックスガンダムに突っ込んで行く。


(おいおいおい……)


ザンスパインは射撃寄り万能機だ。フェニックスもタイプとしては同じく射撃寄りと言える。
相手は元々初心者狩りをするようなプレイヤーだ、それも寒く立ち回るのではなく、攻めてきて破壊しにくるタイプのプレイヤーだろうと予想が出来る。
そんなプレイヤー相手に真っ向から前ブーを踏むとは……


(……地雷と組まされたかもしれないな……っと、こっちに来たデスパーダの相手をしなきゃ)

相手はどうやら、突っ込んでくるザンスパインをダブルロックするのではなく、それぞれ疑似タイマンをすると決めたようだ。
2on2による実力差での勝利よりも、手っ取り早く雑魚狩りをするのがお望みらしい。

(舐めやがって……)


確かにこちらは階級の低いカードを使っているから弱く見られて当然ではあるが、それでも気に食わない。


(理解させて“わからせて”やる……!)

――そして、高コ同士のタイマンと低コ同士のタイマンという形で、この試合は進んでいくことになったのだった。

暇だからガンダムの話書いた2

暇だったので書きました

前の続きです

前のやつ

 

himagine2106.hatenadiary.jp

 

補足説明になりますが、ガンダムVSシリーズとは言っても特定のタイトルを指しているわけではなく、本小説オリジナルで展開しているシリーズとなります。

イメージ的には無印エクバが稼働してから20年目を記念して出された作品と言った感じで、まだVSシリーズに出ていない機体も出す予定マンマンです。

システム面での変更点・追加点も存在しているので、そういった部分は作品内で適当に書いていこうと思っているので適当に読んで下さい。

もっとも、これが続くかどうかはアレなんですけどね。そもそも前に書いた奴も一年以上前だし。

――――――――――――――――――――――

 

 

固定を組みませんか。たったそれだけの言葉ではあるが、俺に与えた衝撃は大きかった。

「は?」

一瞬、何を言われているのかわからず、思わずフリーズしてしまう。

――状況を整理しよう。

俺はいつものようにゲーセンに来て、シャッフルをして、調子よく10連勝した。

気付いたら後ろに居た人間に固定を組んで欲しいと言われた。

なるほど、この事実だけを見るならば、有り得ない話ではない。

固定をしたかったガンダム勢が、連勝を重ねて強そうに見えた俺に声をかけた。

ゲーセンで見ず知らずの人間を同じゲームに誘う……SNSで知り合い、そこから固定を組むといった最近の流れとは違うが、オンライン対戦が実装される前までは見た事のある光景ではある。

ならば何故俺は混乱しているのだろうか。

それは、固定を提案してきた相手が、とてつもない美少女としか形容出来なかったからだ。

まず間違いなくゲームセンターのような場所では見ないタイプの人間であろう。

人形のような、という表現が似合う顔面のパーツに、ともすればホラー映画の登場人物と揶揄されそうな長い黒髪。服装そのものは地味と言ってもいいが、本人の容姿が優れているのでぶっちゃけ気にならない。

もしかして、音ゲー界隈に多数存在すると言われる『オタサーの姫』と呼ばれるような女性なのだろうか?しかし、そういった女性はもっとキャピキャピというか、オタク受けしそうな格好をしそうなものだが。髪型とかも。
いや、地味っぽい格好はオタクに歩み寄る為の擬態なのかもしれない。なるほど、奥が深い。

「あの……いいですか?」

混乱の中、一人思考の海に潜っていた俺に向かって、彼女は不安そうに声をかける。

「あ、ああ、いいですよ、やりましょうコストはどうします?」

思わず了承した上に反射的にコストの提案までしてしまった。やる気勢かよ。

「ありがとうございます! それじゃあ失礼して――」

ぱっと笑顔を花開かせて、彼女は意気揚々と空いている隣の席に座る。

 

いざゲームをするという段階になれば後は馴れたものだ。カードはそのままシャッフルの時使っている物――銅プレカードを刺して、クレジットを投入する。

固定モードを選択した所で、隣の筐体に目をやる。

謎のガンダム勢美少女が刺したカードはこちらの使っているシャッフル用カードと同じくらいのものだった。勝率は見えない設定である。

そこで初めて彼女のパーソナルデータを一つ知る。

(プレイヤーネームは……『ハンマー・カーン』と来たか。 ガンダムの登場人物の名前のパロディ、一般的ではあるけどセンスは正直無いな……)

こちらの視線に気付いたのか、彼女は恥ずかしそうに笑った。

「あはは……何も名前を思いつかなくて、適当な名前をつけちゃいました」

「ああ、PNなんて適当でいいですよね、はい」

適当に返しつつ、彼女とチームを組む。

「コストは合わせますので、何でもどうぞ」

レディーファーストというわけではないが、俺は先に彼女に機体選択をしてもらうことにする。

俺は別に一つの機体しか使えない職人プレイヤーというわけではないので、ある程度は融通が効くのだ。

「それじゃあ……」

そう言って彼女が選んだ機体は――

「ザンスパイン、ですね。 わかりました」

「はい。好きなんです」

ザンスパイン。いわゆるGジェネオリジナル機体である。

V2と同じくミノフスキー・ドライブを搭載しており、機動力に優れた機体だ。

最高コストである3000コストであり、一言で言えば高機動射撃寄り万能機と言った所だろうか。ビーム・ストリングスやティンクル・ビットと言った搦め手、ファンネル武装を持っている。

もちろん光の翼武装として再現されており、ビーム・ファンと組み合わせて近距離でも相手に圧を掛ける事が可能だ。

耐久値が低めに設定されているがポテンシャルの高い機体に仕上がっている。

しかし、この機体が好きという辺り、なかなか食えない女性だと言わざるをえない。

 

さて、相方が3000コストを選んだ以上、こちらは低コストを選ぶべきだろう。

俺が選んだ機体は――

「では、ギャプランで」

――コスト2000のティターンズ製可変機、ギャプランだった。

武装構成そのものは良く言えばシンプル、悪く言えば貧相だった。

そもそも元々持っている武装ビームライフルビームサーベルだけなのだから。

しかし、そこは開発も頭を捻ったのか攻撃のバリエーションそのものは豊富であり、突撃アシスト、ゲロビアシスト、BR連射アシストなどを絡めたアメキャンに、素の機動力も高く、変形中も高機動であり、誘導切り付きの急速変形解除なども相まって、ガブスレイよりもさらに手堅い機体にデザインされている。

機動力の高い3020という至極真っ当な組み合わせで、俺たちはオンラインの海へと潜るのだった。

 

 

――――――――――――――――――――――

 眠れないので書きました。たぶん続きます。

 

たぶん死ぬまで厨二病という自覚がある

どうもこんばんは。ヒマジンです。

いつもの自分語りです。

タイトルの通りです。俺は死ぬまで厨二病なんだろうなという自覚がある。

そもそも厨二病ってなんだよ。

ここで「厨二病とは○○である」と言い切ってしまうのもまあ別に問題はないと思いますが、言語化するとそれはそれで厨二病という概念の側面は持っているけれども本質が変わってしまうような気がしてちょっと躊躇ってしまいますね。無駄な拘りというかなんというか、どうせ自称するなら誤解のないようにしていきたいというか。

この駄文を読んでいればなんとなくわかると思います。延々と上記のような事ばかり考える人間が厨二病ということです。

少なくとも私はそう。

厨二病だからこそ自分がオタクであるという事にある種の自負やプライドのようなものを持っています。めんどくせえ奴だな本当によ

しかし俺は無敵なのでそんな自分も大好き。基本的にはナルシストだけどナルシストと思われるのも何か嫌なのであまりそういう素振りは普段見せません。自分第一。

無条件で自分を肯定出来るからこそこういう傍から見たら痛い文章でも何の恥じらいもなく書いて晒せます。

まあ、自分を肯定出来はするけれどもやはり他者に自分を知ってもらいたい、認めてもらいたいという欲は少なからずあります。暇つぶしや連絡手段以外の理由でSNSをやっている理由のひとつ。

こういう思考がもう10年以上続いてます。人生の半分近くこう考えて生きてるんだから、これが変わることはそうそうないですね。

 

まあ結局、私がこうやって書かなくても誰だって自分が第一なのは間違いのないことでしょう。だからこそ、それを踏まえて生きるべきだと思っています。

他者と関わらずに生きるのは現代を生きる人間には不可能と断言出来るでしょう。他者に迷惑を掛けずに生きるのは不可能とも言いかえられます。

全ての人間が「他者になるべく迷惑を掛けないように生きる」ことが出来るのならそれが平和なんじゃないかなーとは思っています。

迷惑をかけるのは生きる上でどうしようもない。だからこそ、自分が不愉快に思わない程度には歩み寄る姿勢も必要。

まあ簡単に言ってしまえば「相手のことを考えて行動する」ということです。

それが実践出来れば一番良いですが、まあ人間なのでその日の気分によって出来ないことだってあります。

というかここまで書いてて思いましたが、当たり前のことしか書いてねえな。

でも世の中にはこの当たり前が出来ない人間が存在するのも事実です。GTOとかゴトウとか後藤とか。

 

まあだからこそ、このクソみたいなブログを読んで共感があったなら、皆さんもちょっとは相手のことを考えて行動しましょう。まあ俺がそれを実践出来てたならサブカ使って雑魚狩りはしねえんだけどな

 

 

ある程度長文書きなぐってたら満足したのでこれくらいで終わります。

あ~~~金が欲しい~~~~あと創作意欲~~~~~~~~~~書いてる途中で「なんかもういいや」ってなるのやめた~~~~~~~~~~い

適当に短編小説を書いた2

こんばんは、ヒマジンです。今日も今日とてお題を貰ったので書いていきます。

今回のお題は『公衆電話』です

というわけで書いていきます。

 

 

 

「ええ……マジか……」

 予想外の出来事に、俺はため息をついた。

 スマートフォンの充電が切れたのである。仕事が終わり、仕事場から最寄り駅に向かう途中での事だった。

 昨日の夜、充電するのを忘れたまま寝た結果がこれだ。今朝はそれに加えて寝坊気味で、モバイルバッテリーやケーブルを持っていくのも忘れた。それにしたってまだ20%ほどは充電が残っていたはずなのだが……このスマホも買ってから結構使い込んでいるし、バッテリーの寿命が来ているということなのだろう。そろそろ買い替えた方が良いのかもしれない。

 しかし、困った。今日はなんとなく外食がしたい気分なのだ。

 俺は社会人として普通に働いてはいるが一人暮らしはしておらず、実家にそのまま住んでいる。朝食は食べないので用意して貰ってないが、夕飯に関しては別だった。家族でなるべく一緒に食べるようにしているのだ。

 今の仕事現場は遠く、家の最寄り駅までここから電車で1時間程度掛かる。なので、夕食をするタイミングもそれに合わせてくれており、食べない場合は電話などで連絡する必要があった。

 しかし、スマホの充電が切れている以上、連絡する手段がない。こうなれば大人しく帰宅するべきだと思うが、俺の舌はもうジャンクなラーメンの舌になっているのだ。何としても外食をしたい。が、家族を待たせるのは論外だ。

 どこかで充電すべきか。しかし、パっと思い浮かぶ場所はない。ケータイショップでは無料で充電出来るスペースが存在するが、そもそも仕事場の最寄り駅付近には存在していない。同じように充電するスペースがあるような大型の家電量販店もなく、充電が出来る飲食店を利用するのはどう考えても金の無駄遣いだ。

 そもそも、充電する時間が惜しいというのもある。そして俺は1つの考えに思い至った。

「公衆電話を使えばいいじゃん」

 何もスマホを使うことに拘らなければ電話する手段はあるのだ。空腹と焦燥感のせいで思考が鈍っていたのか、そんな単純な解答に中々辿りつけなかった自分が馬鹿らしく思える。

 そうと決まれば行動だ。俺は公衆電話を探すことにしたのだが……

「……そもそも、公衆電話ってどこにあるんだ?」

 普段から何となく公衆電話や電話ボックスがあるのはわかるのだが、そもそもが全く利用しないので場所を把握していなかった。携帯電話の普及により最近では数もめっきり減っているようだし、どうしたものか。

「う~ん……」

 記憶を探るも、明確な場所は思い出せない。数分唸って、ようやく可能性を見つける。

「公園とかに電話ボックスが置いてたりするよな……」

 確か、現場に歩く道の途中に小さな公園があったはずだ。もう駅の近くに来ているので仕事場に戻る羽目になるが仕方ない。

 そうして公園まで歩くと――

「――あった!」

 公園の端っこにぽつんと光る電話ボックスを発見し、意気揚々として近付く。いざ、利用しようとした所で俺は致命的な事実に気付いた。

「小銭が無い……」

 仕方なく飲みもしないお茶を自動販売機で購入し、小銭を作る。しかし、またしても問題が発生した。

「小銭が認識しない……」

 古い公衆電話のようで、メンテナンスもロクにされていないのか、手持ちの小銭を何度入れても反応せず、そのまま出てきてしまう。肝心な時に使えなくてどうするんだよ! と心の中で叫ぶ。

 テレホンカードなど、普段全く使わないものを持っているはずもなく、大人しく駅に向かうことにした。

 駅に付き、ふと、視線がある物体に吸い寄せられた。

 ――公衆電話である。

「駅に置いてあるのかよ……」

 知らない俺が悪いのだが、やるせない。もう電話する気力も無く、俺はそのまま電車に乗って帰宅することにしたのだった。

「ただいまー……」

 自宅に着いたが、どうにも様子がおかしい事に気付いた。やけに静かというか明かりが無いというか、誰も居ないのである。

 俺は嫌な予感と共に自室に戻り、充電器にスマホを繋いでスマホを立ち上げた。そして、嫌な予感は留守番電話という形で当たっていた。

『あー、もしもし? 今日はちょっと忙しくてご飯作る時間無かったから、お父さんと一緒に外で食べてくるわ。あんたも適当に外で食べときなさい。たまにはいいでしょ、それじゃあね』

 母から来ていた留守電を聴いて、俺は項垂れる。

「今度はテレホンカードを持ち歩くことにしよう……モバイルバッテリーとケーブルも……」

 虚しく鳴る空腹の虫の音を聴きながら、俺はそう決意した。

 

 

 

 

書きました。何となく今回も1時間くらいで書くのを目標にしました。

お題を募集すると全く考えたことのない方向から飛んでくるので良い練習になる気がします。次にお題募集した時に複数来たら悪魔合体して書こうと思います。