タイトルは、神アニメ『ガン×ソード』の中でも特に好きなセリフです。
今回の記事で書くことにガン×ソードは関係ありません。
今回書くのは……
TVアニメ
ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
アイドルアニメについての記事です。
自分語りもめちゃくちゃ多いのでめんどくせえオタクだな、と思ったら読み飛ばしてください。
あとめちゃくちゃにネタバレしまくってるので
ネタバレされるのが嫌いな人
まっさらな気持ちで作品に触れたい人
そういった方は読まない方が良いと思います。
さて、俺の事を多少なりとも知っている人間しかこのブログを読んでいないと仮定して……思ったことがあると思う。
「なぜお前が萌えアニメ(アイドルアニメ)に夢中になっているのか」
と。
俺はまあ客観的に見て硬派なオタクであり、いわゆる萌えアニメをあんまり見ないオタクだ。
その代わりに熱いアニメや泥臭いアニメを好んでいるニトロプラスが大好きなオタクだ。
おおよそ、アイドルコンテンツに縁のないタイプというか……そもそも興味自体があんまりわかないタイプなのだ。
だからといって萌えのコンテンツに一切理解が無いわけでは全然無く
実際はきららアニメとか結構好きだ。きらら漫画も結構読む。
それに最近は食わず嫌いをせず、色々なコンテンツに触れてきてもいる。
では何故そんな硬派なめんどくさいオタクである俺がアイドルアニメであるラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(以下、アニガサキと呼称する)に熱を入れているのかを適当に書き綴っていこうと思う。
本題に入る前に一応注意書きというか
そもそもこの記事に書いてある事は俺の主観なので実際の展開と微妙に差異があったり「この解釈は違うんじゃね?」ってなっても俺は知りません。
そもそものブログ名が「自己満足ワールド」な辺り、予防線は貼っている。
脈絡もない話もするし論文のように理路整然と纏めているわけでもない。
めんどくさいオタクがめんどくさいことを書いていると認識してくれればいい。
というわけでアニガサキについてではあるが……感じた事を適当に箇条書きにしていこう。
・話が単純に面白い
・話が非常に丁寧に作られている
・キャラクターに魅力がある
・キャラクターが生きている
・作画が良い
・音楽が良い
・物語に説得力がある(すんなり物語の展開を受け入れられる)
こんな感じである。
ぶっちゃけ特異な要素はない。要素だけを見るならば「良く出来た面白いアニメ」の一言で終わるだろう。
同じ2020年の「良く出来た面白いアニメ」で言うのならば「デカダンス」のように目を引くような新しい世界観があるわけでもなく、主人公が何かをぶっ壊す!みたいな話でもない。
ラブライブ!シリーズを知っている前提で話すならば……
『スクールアイドルを題材にした普通の青春スクールアイドルアニメ』であると言える。
スクールアイドルをしている女の子達の日常を描く王道のアニメと言えるだろう。
しかしアニガサキは「ラブライブ!」というシリーズの中で言えばむしろ異端と言える物語だった。
過去にアニメを放送していた「ラブライブ!」「ラブライブ!サンシャイン!!」は、タイトルに冠されているように「ラブライブ!」と呼ばれるスクールアイドルの大会に出場すること(優勝すること)が大目標として設定されている。
アニガサキを見るにあたってまず俺が最初に思った事……「こうなるだろう」と予想した展開はこうだ。
主人公となるキャラクターが物語を動かし、同好会を復活させ、何だかんだ最終的にはグループ全員が想いを一つにして「ラブライブ!」に参加し、優勝するなり優勝せず敗退するなどしてリベンジに燃える……そんな物語だ。
俺が予想した物語はラブライブ!シリーズを見てきた視聴者からすれば「またこの展開か」とはなるかもしれないが、それだけに「そういう話が見たい」層に向けた話としては無難ではあるし、作り方によってはより盛り上がる展開も作れるかもしれない。
だからそうするのだろうな、と思った。
しかしアニガサキは違っていた。
まず、主人公がアイドルではない。
ラブライブ!に於ける穂乃果のように自らアイドルをして、グループを引っ張っていくリーダー的な人物ではない。
語弊があるかもしれないが、アニガサキという作品に於いて主人公を定義するならば「高崎侑」が主人公と言えるだろう。
これはアニメの大元と言えるアプリゲーム、スクスタにおける自身の分身……FGOに於ける藤丸立香、通称「あなた」に位置するキャラクターだからだ。
侑は言わばスクールアイドルのマネージャーだ。
アニガサキという物語は侑が「優木せつ菜」というスクールアイドルのライブを見て、スクールアイドルに興味を持った所から始まったのだった。
アニガサキが他のラブライブ!シリーズと違う点として、虹ヶ咲学園は閉校の危機に扮しているわけではないという点がある。
ラブライブ!とサンシャイン!!は、主要なキャラクターがスクールアイドルをするにあたり「自分達の学校を盛り上げる為」という理由があった。
スクールアイドルの全国大会である「ラブライブ!」で活躍すれば統廃合の危機を脱せられるかもしれないから、優勝目指して頑張る……
これも青春モノや部活モノではありがちな王道的な話の作りと言えるだろう。
ありがちではあるが、そういった作品の全てが廃校の危機だから頑張る!という話ではない。
普通の部活モノでも優勝を目指したりするだろう。
優勝するという目標は、物語の行く先を定める上で非常にわかりやすい物であるからだ。
なので先ほども書いた事ではあるが、このアニメはラブライブを目指して頑張る話なんだろうなと思っていた。
1話、2話と話が進む度にスクールアイドル同好会のメンバーをキャラ紹介ついでに増やしていくような感じで進むのだろう、と。
しかしその考えは3話で打ち砕かれることになる。
さて、アニガサキ3話について語る前に、あるスクールアイドルの話をしよう。
虹ヶ咲学園のスクールアイドル同好会は、一度解散している。
それはグループとして活動していたメンバー同士のスクールアイドルに対する認識の違い、意識の違いからだ。
いわゆる「音楽性の違いによる解散」と言えるだろう。
解散の発端となったのは……優木せつ菜というスクールアイドルだった。
彼女は真面目なしっかり者であり……尚且つ非常に情熱的な性格をしている。
そのような彼女の人間性が悪い方向に作用してしまい、同好会のメンバーと衝突してしまう。
語弊を招くかもしれないが、わかりやすくゲームで例えるならせつ菜はガチ勢である。
そして同好会を協力ゲーと考えるなら、せつ奈は自分のプレイスタイルを他人にも強要してしまっていたのだ。
同じくスクールアイドル同好会のメンバーである「中須かすみ」は、せつ菜の目指すスクールアイドルと自分のやりたいスクールアイドルは違うと叫んだ。
そしてせつ菜は自分自身の考えを他人に押し付けていたと自覚する。
優木せつ菜というキャラクターには野望がある。
これはアプリ、「スクスタ」のキャラクター紹介でも書かれている事だ。
『私ね、実は大きな野望があるんですっ!
ちょっと恥ずかしいけど勇気を出して言いますね。
それは『大好き』を世界中に溢れさせちゃうスクールアイドルになることなんですっ!』
彼女は自分の好きな事を押し付けることをせず、誰の好きな事も否定しない世界を作りたい……そんな信条でスクールアイドルとして活動していたのである。
しかし、彼女はその情熱が裏目に出てしまった。
誰かの……中須かすみの持つスクールアイドル像を、彼女の「大好き」を否定してしまっていたのだ。
その事に気付いた彼女はスクールアイドルを辞める事を決意する。
せめてものケジメとしてグループお披露目ライブで一人ステージに立ち、最後のライブをして去っていった。
侑が1話で見たライブはその時のライブである。
アニガサキ3話本編について語ろう。
主人公である侑は自分がスクールアイドルに興味を持つ切っ掛けとなった人物である優木せつ菜の正体が
生徒会長である「中川菜々」であると知ることとなった。
そして一度は解散した同好会ではあったが、離れていたメンバーが戻ってきたということもあり
人数だけで言えば無事に同好会を再建することが可能な人数になっていた。
だが、同好会を復活させるには優木せつ奈という存在が不可欠であると語るメンバー。
優木せつ奈を説得することに名乗りを上げたのは侑だった。
侑はせつ菜を校内放送で呼び出し、スクールアイドル同好会に戻って欲しい、と告げる。
そんな侑に対してせつ菜は
「自分がスクールアイドル同好会に戻ったらまた同じようにグループが崩壊して
ラブライブに出れなくなってしまう」
と吐露する。
しかし侑はそんなせつ菜に向かって「だったらラブライブなんかに出なくて良い!」と叫んだのだ。
彼女は続ける。
「私は、せつ菜ちゃんが幸せになれないのが嫌なだけ」
「ラブライブみたいな最高のステージじゃなくてもいいんだよ。せつ菜ちゃんの歌が聴ければ、充分なんだ。…… スクールアイドルがいて、ファンがいる。それでいいんじゃない?」
ラブライブを目指す事によって大好きを否定することになるくらいなら
ラブライブを目指さずにスクールアイドルをすればいいのではないか、と。
せつ菜は問いかける。
「どうして、こんな私に……」
大好きを広めたいと言いながら他人の大好きを踏みにじってしまった自分に、なぜそんな優しい言葉をくれるのかと。
侑の返答はこうだった。
「言ったでしょ?「大好き」だって。こんなに好きにさせたのはせつ菜ちゃんだよ?」
それは侑にせつ菜の「大好き」が伝わったことがわかる瞬間だった。
そしてある意味では自分勝手な言葉だ。
侑にとってせつ菜は「大好き」なスクールアイドルだ。
侑はそんな彼女の辛い姿は見たくないし
せつ菜のスクールアイドルをする姿が見たいい。
だからスクールアイドルを続けて欲しい。
そんな自分勝手な願いだ。
せつ菜は侑にこう告げる。
「あなたのような人は、初めてです」
このセリフは視聴者の代弁でもあるだろう。
少なくとも俺はそう思った。
ラブライブ!シリーズなのに「ラブライブなんかに出なくていい」と言ったキャラは初めてだ。
せつ菜は侑に続けて問い掛ける。
本当に良いのか、と。わがままを……大好きを貫いても良いのか、と。
侑は満面の笑みで「もちろん!」と答えた。
その返答を聞いたせつ菜は、
「わかっているんですか?貴方は今、自分が思っている以上に、凄いことを言ったんですからね?……どうなっても、知りませんよ!」
眼鏡を外し、髪を解いて……生徒会長から、スクールアイドルへと変身する。
「これは、始まりの歌です!」
その場でゲリラライブを決行し、自分はスクールアイドルに所属する優木せつ菜だ!と叫び、彼女はスクールアイドル同好会に復帰し、そしてそゲリラライブを見て「自分達もスクールアイドルをやってみたい」と言う、同好会のメンバーになるであろうキャラクターを匂わせて、3話は終了する……
こうして3話を見終わって結構な衝撃を受けた記憶がある。
ラブライブ!でラブライブを目指さない発言、ラブライブ目指さないならどういう展開にすんの?どうなんの??と、なった。
アニガサキを最後まで追ってみよう、と思い始めたのはこの回を見てからだったと思う。
そもそも俺がアニガサキを見始めた理由は、 知り合いのオタクが見るらしいからだった。
このアニメを見ればオタクと話す時の話題になるだろうし
クソアニメだったならバカにして笑えるだろう……というしょうもない理由だ。それが全体の理由の7割くらい。
残りの3割はあるキャラクターが気になったからだった。そのキャラとは
「天王寺璃奈」
という、顔面を隠した女だ。
スクールアイドル同好会のメンツの中でも一際目立つ容姿をしたこのキャラクターは、ライブをする時に素顔を見せず、「璃奈ちゃんボード(上記画像のモニターやスケッチブック)」を装着してステージに上がる、アイドルアニメというジャンルの中でも一際特異なキャラクターと言えるだろう。
俺が彼女を見た時に抱いた感想は、いかにも“オタク受け”しそうなキャラだな、というその程度のものだった。
ロリ体型、アホ毛、萌え袖、猫耳ヘッドホンに璃奈ちゃんボード……このキャラクターは一発で「二次元」とわかる。
キャラクター設定を並べてみても
・情報処理科
・機械にも強い
・ゲームが得意なオタク
など、オタクが共感を持ちやすい設定となっている。
オタクはオタク女のキャラクターが好きなのだ(偏見)
この天王寺璃奈というキャラクターは、発表されてから2年間素顔を晒すことの無かったキャラクターであり、素顔がわかった時はTwitterのトレンドにもなったほどだ。
アニガサキを見始めた時の俺は、上に書いてある程度の事を事前に軽く調べていた。
なので、アニガサキに登場する時はスケッチブックで顔を隠して登場するのだろうと思っていた。アニメ公式サイトのメンバー紹介でも隠しているし。
しかし、それは違った。
彼女はアニメに初登場した段階で素顔を晒していた。
これはかなり意外に思った。
天王寺璃奈のアイデンティティは璃奈ちゃんボードにあると思っていたからだ。
しかし彼女はボードをつけず、素顔のまま、無表情のままにアニメに登場した。
俺は無口なキャラ、無感情なキャラが好きだ。
俺はちょろいオタクなので、素顔でアニメに登場した天王寺璃奈というキャラクターを一発で好きになった。
俺は作品を追う上で好きなキャラクターを見つける、定めるということは重要だと思っている。
さほど興味の無い話の展開だとしても、好きなキャラクターがいつ画面に映るか……そしてどう動くか……と楽しみにして作品に臨めるからだ。
天王寺璃奈というキャラクターを好きになってから、「この娘の個人回までは見よう」と決めた。
そうして天王寺璃奈の姿を追いながらアニメを見続けている中、3話のあの展開にぶち当たり、この作品と本気で向き合うべきかもしれないと思い始める。
天王寺璃奈の個人回があったのは6話だった。
1~5話までを見続ける中で、俺はアニガサキが丁寧に丁寧に作られた作品であると確信した。
話の展開に無理があると感じない、論理性のあるアニメであると思ったのだ。
ご都合主義的な描写は可能な限り抑えられており、「この設定のこのキャラクターはこの状況だったらこうするだろう」と素直に受け止められるストーリーだった。
わかりにくい例えになるが、なろう系アニメをニコニコで見た際の
「は?」「そうはならんやろ」
というようなコメントが流れてこない、そんなアニメがアニガサキだ。
歌い出すとMVが流れ出して固有結界だのなんだのと言われるのは無視するとして。
俺のフォロワーのオタクはこの作品をこのように語っている。
「アニガサキはご都合主義を本当に最低限に抑えてる。個人の思考としてご都合主義(デウス・エクス・マキナ)などは頼らなければ整合性ポイントがストックされていって、大事な場面の勢いを優先することが出来る」
この「整合性ポイント」という概念は俺もわかりやすいと思ったし、その通りだと思った。
アニガサキのキャラクターはそれぞれにスクールアイドルをする理由や夢、アイドルをする上での目標がある。
個人回ではアイドルをすると決めた理由、そしてステージに上がって目標を達成する様子が描かれる。
このそれぞれの理由付けと目標を達成するという描写が非常に丁寧であり、問題提起とその具体的な解決策はどれも納得出来るものだった。
問題を提示し、解決に向かうまでの流れで整合性ポイントを溜め、その解答にご都合主義的な描写が必要ならば描写する。
その時のご都合主義感は、整合性ポイントを消費することによって違和感無く「面白い物語」として受け入れることが出来る、ということだ。
6話もその例に漏れず丁寧に描かれた回だった。
感情を表に出すのが苦手であり、楽しい時も真顔のままで、周囲の人間に誤解されがちな……そんなキャラクターだ。
いわゆるコミュ障。
「わたモテ」のもこっちや「古見さんはコミュ症」の古見さんのようなキャラクターだ。
この2人のキャラクターはモテたい、友達を作りたいという思いを持っており、それぞれの作品もコミュ障が自分が関わる人を増やすために頑張る……といった内容である。
天王寺璃奈も同じような願いを抱えている。
彼女はシャイで臆病な気質はあるが、人付き合い自体は好きな方で、誰かと話をするのが好きなキャラクターだ。
意外にも行動力がある方なので、友達を作ろうとしては失敗する……そういう経験を繰り返しながらも、それでも諦めずにまた友達を作ろうと頑張れる。
それが天王寺璃奈という女の子だ。
そんな彼女が虹ヶ咲学園で初めて出来た友達が「宮下愛」である。
通称「愛さん」と呼ばれる彼女ともまた色々な関係性があるのだが、今回は省くこととする。
天王寺璃奈は彼女と一緒に優木せつ菜のゲリラライブを見て、スクールアイドルをしようと決めたのだった。
彼女もまた、優木せつ奈というキャラクターに影響された人間の一人だ。
スクールアイドル同好会のライブ映像を編集し、動画サイトに投稿しているのは彼女である。
部員のPVを作っているのも彼女のようだ。
彼女はある日の放課後、スクールアイドル同好会のメンバーとアミューズメント施設(ジョイポリス、ライブも出来るらしい)で遊んでいる所、クラスメイトと遭遇する。
クラスメイトである彼女達はスクールアイドル同好会の事を知っており、ライブ動画やPVを見て、歩夢のファンになった人物も居た。
彼女達はスクールアイドル同好会の次のライブが待ち遠しいとの事で、次のライブはいつなのか~という話題になった。
璃奈は思う。
(友達に……なりたい)
璃奈はある決心をして、その場でクラスメイトに告げる。
「やる。……私、ここでライブやる!」
彼女は自分の最初のライブを、クラスメイトを誘おうとして一度諦めてしまったジョイポリスのステージですると決めたのだった。
急にライブをすると決めたという事もあり、ライブまでの準備期間はそれほど長い物ではなかった。
彼女は限られた時間の中、スクールアイドル同好会の皆に協力してもらい、ライブを成功させることを誓う。
ライブ映像は自分で作れるからパフォーマンス面を鍛えて欲しい……との事で、彼女は仲間達に師事する事になる。
璃奈は努力家でもあり、彼女が真面目に頑張って来た事が描写される。4話では全く出来なかった柔軟が多少は出来るようになっていたり、MCは苦手だから今回のライブでは省くか、との提案があった時も
「ううん、やる。今回は、『出来ないからやらない』は、無しだから」
と言って、自分の全力を尽くすことを表明する。
場面は変わり、璃奈は同好会のメンバーを自分の家に招待する。
ライブ用に作った映像を見て貰い、それの感想や意見を貰うためだ。
この時も彼女が機械に強いという描写がされる。
彼女はスマートフォンで家の事は大体出来るようにしてあると語る。
機械に強くなったのも小さい頃から友達が居なかった為、必然的に一人で遊んでいたからだ。
そのうちに工作などが得意になったのだと。
そして彼女は語る。「高校生になって、こんなに毎日がワクワクするなんて思わなかった。こんなに変われるなんて思わなかった」と。
そう語る彼女の顔は無表情ではあったが、彼女の中では確かに変わったという実感があるのだ。
「みんなに、すごく感謝してる。私……頑張るよ」
決意を新たにする璃奈。
(そうだ……もう私は、この前までの私とは違う!)
ライブを告知するPVもアップされ、いよいよライブの日が近づいてきていた。
パフォーマンスも仕上がってきており、準備は順調。
そんなある日、練習中にクラスメイト達に話しかけられる。
彼女達もライブを楽しみにしているようだった。
(今の私なら……)
彼女は意を決して、クラスメイト達に話しかけようと歩み寄り……
「もし、よかったら……」
「もし、よかったら……!」
ふと、ガラスに映る自分の姿を見てしまった。
そこに写っていたのは、今までと全く変わらない無表情の自分の姿だった。
ライブに向かって努力をしても、スクールアイドルとして頑張っても、全く変える事の出来ない自分の表情を目の当たりにしたのだ。
意気消沈した璃奈は、クラスメイト達の前から立ち去り、自分の部屋に閉じこもる。
(私は……変われない)
ライブの前日になっても同好会の練習に姿を見せない璃奈を心配し、彼女の家に全員で押しかけるスクールアイドル同好会の面々。
璃奈は同好会の面々を家に上げ、彼女達と対面する。
しかし璃奈はダンボールを被っており、誰とも顔を合わせたくないようだった。
そんな璃奈に愛さんは「どうしたの」と声をかける。
璃奈は己の心情を吐露する。
「自分が……恥ずかしくて」
「私は、何も変わってなかった」
スクールアイドルとして頑張ってきたのに、自分の一番変えたい部分は何も変わっていなかった。
昔から感情を誤解され、皆と仲良くしたいと思ってるのに、誰とも仲良くなれなかった。
今もクラスに友達は居ない。
それも全部、自分のせいなのだ。
「もちろん、それじゃダメだと思って、高校で変わろうとしたけど……最初はやっぱりダメで……でも、そんな時に、愛さんと会えた。スクールアイドルの凄さを知ることが出来た」
「もう一度、変わる努力をしてみようって思えた」
歌でたくさんの人と繋がる事の出来るスクールアイドル……それが出来れば、今とは違う自分に変われるかもしれない、と。
そして努力してきた。
けれど、どうしても気になってしまう。
自分の表情が変わらないことが。
何度も何度もそれで失敗を重ねてきたから。
どうしても気になってしまう。
表情で誤解されてしまうと思うと、胸が苦しくなってしまう。
こんな風に思ったままじゃ、ライブなど出来ないと、思ってしまう。
「私は、みんなと繋がる事なんて、出来ないよ……ごめんなさい」
そう言って、同好会のメンバーに謝罪する。
「ありがとう。璃奈ちゃんの気持ち、教えてくれて」
そんな璃奈に告げられたのは、侑の感謝の言葉だった。
愛さんもそれに同意し、侑はさらに言葉を続ける。
「私、璃奈ちゃんのライブ、見たいな。……今はまだ、出来ないことがあってもいいんじゃない?」
同好会のメンバーも侑に続いて言葉をかけていく。
璃奈には出来ることがたくさんあるのだから。
だから今は出来ないことがあってもいいんじゃないか、と。
そしてかすみはこう語りかける。
「ダメなところも武器に変えるのが、一人前のアイドルだよ?」
愛さんもそれに続く。
「出来ない事は出来る事でカバーすればいいってね。一緒にそれを考えてみようよ」
そして、ダンボール越しではあるが、自分と真剣に向き合ってくれている皆に感謝の言葉を告げ……そして、ある考えを思いつく。
ダンボールを被ったまま立ち上がり、閉じられていた部屋のカーテンを開け放ち、「これだ!」と叫ぶのだった。
そして迎えるライブ当日。
同好会のメンバー達に「がんばれ」と応援されながら、彼女はステージ向かった。
そして璃奈のMCが始まった。
PVでも使っていた猫のキャラクターに自分の声を乗せてMCをする璃奈。
裏で流れているBGMは「アナログハート」という、彼女のソロ曲のイントロだ。
アナログハートの歌詞の内容としては、「例え離れていても、心は繋がっている」というものだ。
虹ヶ咲学園のスクールアイドル同好会は、グループ活動をしているわけではない。
部員のそれぞれはソロアイドルである。
しかし、一人でステージに立つのではない。
それぞれが助け合い、背中を押してもらってステージに立っている。
ライブをする時は一人ではなく、心は繋がっている。
MCが終わり、姿を表す璃奈。
彼女の顔にはある装置が取り付けられていた。
自分の表現したい感情を表す為のモニター。
それは、「璃奈ちゃんボード」だった。
仮面のようなそれは、彼女の本来の表情である「無表情」を隠している。
しかしそれは、表情を隠し、自分を偽って、心を守るための防具ではない。
それは彼女の武器だ。
自分の感情を表現し、感情を伝えて、周りと繋がる。
それが彼女の出した解答だった。
自分の表情を変えることが出来ないのなら、出来ることでカバーする。
自分の得意な機械を使って、無表情というダメな所を、唯一無二の仮面アイドルという武器にする。
そして彼女のライブは始まる。
パフォーマンスを終えた璃奈は、心の中で叫んだ。
(……皆と、繋がった!)
「璃奈ちゃんボード「『にっこりん♪』」
天王寺璃奈というキャラクターを象徴するセリフを言い放ち、ライブは終了する。
そして後日。
学校に登校してきた璃奈に向かって、クラスメイト達は「おはよう」「ライブ最高だった!」と告げる。
クラスメイト達は呆気に取られる璃奈に向かって、いっぱい感想も言いたいし、お昼ご飯も一緒に食べよう!と声をかけるのだった。
璃奈はスケッチブックを取り出し、とびっきりの笑顔を描いて、彼女達に告げる。
「いいよ!一緒に食べたい!」
最高の回だった。
神回と言っていいだろう。
天王寺璃奈というキャラクターが何故璃奈ちゃんボードを使うに至ったのかを描く上で、これ以上はないと思えるような回だった。
俺はスクスタのストーリーを全て把握しているわけではない。
しかし、天王寺璃奈というキャラクターを描く上で、アプリとは全く違った、1から天王寺璃奈というキャラクターを描く話だったと確信している。
アニガサキは整合性ポイントとご都合主義の使い方が上手いという話は既にした通りである。
璃奈が努力してきた描写を丁寧に描き、整合性ポイントを溜めていく。
そして物語を進行する上で起こってしまった問題を解決する為のご都合主義が璃奈ちゃんボードだ。
俺はこの展開に心から納得出来た。璃奈ちゃんボードという二次元極まりないアイテムを出す説得力が、論理があった。
単にオタク受けを狙うキャラクターデザインとしての璃奈ちゃんボードではなく、天王寺璃奈というキャラクターを活かすための璃奈ちゃんボード。
そして俺は、天王寺璃奈というキャラクターが大好きになったのだ。
というわけで、前編終了である。
本当は年内に全て書きあげてから投稿したかったアニガサキの感想ブログではあるが、流石にこの段階で文字数が1万文字を超えている事に気付いてそれは諦めることにした。
後編では、このアニガサキという物語がどういう物語で、どのような結論を出したか、について書いていきたいと思う。
アニガサキは夢を描く物語でもある。
アニガサキを見てないのにこの記事を最後まで読んだ人へ。
ここまで読んだなら、このアニメが本当に面白いアニメだとわかるはずだ。
アニメのサブスクを使うなりなんなりして、アニガサキを今すぐ見よう。
そして俺とアニガサキの面倒なオタク話をしよう。
いつか、同じ夢の話をしよう。